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2011年3月22日 (火)

大災害後の治安維持 国民保護計画への提言採録

 私が、国民保護計画に関わったのは、非常事態における治安維持について提言する役割を果たすためであった。私の提言をブログに採録する。

1章(2)国民保護計画と治安問題

混乱時における治安悪化あるいはパニック

日本社会は、地震や台風の災害直後に、犯罪が多発するような事象が見られないことが特徴である。この特徴は近年でも失われてはいない。しかし、関東大震災のさいに、自警団が暴走行為に及んだことは良く知られている。原因は直接的にはパニックのせいである。パニックとなれば、日本社会の良き特性は消えうせてしまう。パニックを防ぐためには、信頼できる情報を伝達すること、つまりデマを防ぐことが大切であるが、要となるのは、現地のリーダーである。リーダーがパニックを抑えられないで、逆に乗ってしまう場合に、虐殺事件のようなことが起きてしまう。最悪の事態として、住民全体がいきりたってしまうと、警察署長等も抵抗できなくなって、共に暴走する危険がある。

事態が深刻化してから突然に自警団が発生するのにまかせずに、前もって、住民協力組織を立ち上げ、リーダーを正しく選び、鍛え、サポートする体制を作ることが必要と考える。とりわけ、外国人が集中して居住する地域とその隣接地域に話の通じるリーダーがいる状態にしておきたい。

武装攻撃相手国の滞在者に対する注意

 外国人の避難誘導についての一般的な注意に加えて、相手国の平和的在住者の人権が守られるように配慮することは当然である。しかし、それとともに、武装攻撃への協力行為に対して警戒の必要がある。

高性能ライフル等による無差別狙撃

新たに起きるかもしれない危機状態として、指摘しておきたい。見通しの良い、広くて直線的な道路を持つ街は、ひったくりには強いが、この種の事件には弱い。アメリカで逮捕に苦労したように、地方都市を転々としながら、毎週一回の狙撃で、単独犯行でも大きな影響を与えることができる。

国民保護と治安対策の重なり

 国民保護も治安維持も同様に、警察その他の機関に国民は守ってもらう意識でいてはいけない。関係諸機関がいかに見事に統制されて動こうとも、地域の一般市民の協力なしには、効果は生じない。最も長期的な視点と言い換えても良いが、地域の力を強く保つことについて準備すべきことを提案したい。防犯について、近年、いわゆる「体感治安」の悪化がおきているが、犯罪者達はむしろ勢力を弱めている。警察の能力も低下していない。問題があるのは、地域の連帯不足であり、地域の力の保持について地域住民の協力が必要であるのは、以下のような項目である。

  

(ア)不審者の発見と通報

(イ) 情報伝達

(ウ) 避難のさいの助け合い

 防犯について、内側から犯罪者を出さない努力は横において、外部からの侵入者を想定すれば、道徳倫理の類ではなく、大切なことは地域社会の匿名性の低さである。外部からの不審者とは見慣れない人である。情報伝達や避難時の助け合いに互いが、もともと知り合いであることが大きな意味があることは容易に理解できるであろう。

 残念ながら社会の匿名性は急速に高まっているが、幼い子どもを持つ親にとって、こどもの遊び相手は不可欠であり、小中学校の校区というのは、知り合いがまとまっている最後の砦であると考える。

 【課題1】 学区と警察署の管轄、消防署の管轄の境界をできるだけ一致させる。

 本来、あらゆる管轄の境界が完全に一致したひとまとまりである地域を地域共同体と呼ぶはずである。全く別の便利さから、通りをはさんだ、おむかえの家は他の町内といった区画を引いてしまっている。おむかえの住人こそ、最も顔を合わす相手であったはずである。「自分は、どこどこの出です」と言える地域アイデンティティを大切にしたい。

 【課題2】 遠距離通勤を減らす。車でなく歩く活動をする。大型商業施設をつくらない。地域の祭りを行う・・・

自然災害の場合の帰宅難民問題として意識されているが、武力攻撃事態等においても、自宅から遠くに通う住民が多いほど脆弱な地域となる。地域が留守状態という意味と、帰宅の混乱の両面でマイナスである。また、地域住民が顔を合わせる機会であった買い物活動を、車で遠くの大型店にいくことによって奪われたことは大きい。歩かなければ、顔を合わす機会はない。徒歩圏のまとまりが必要である。

【課題3】 主要自動車道路と鉄道による県内進入を見張る

海からよりも、交通が自由になっている社会においては、観光客宜しく、航空機で入国した後、自動車や鉄道によって県内に侵入してくる可能性は高い。Nシステムが高速道路等はチェックしているが、無防備に近い、新幹線その他の鉄道に留意すべきである。重要な駅の改札でのチェック方法を検討すべきである。

【課題4】 昼夜のケジメをつける

近年の日本社会だけの特徴と思われるが、昼夜の区別がなくなり、とりわけ夜に出歩く住民が多い。繁華街が安全になったことも原因であろう。いずれにせよ、110番の急増などによって、警察が手一杯となり、警察庁が、「優秀な警察と安全な日本」という安全神話を放棄して、警察官増員を求める方向に踏み切らせる元になった。「こんな時間にこんな所でなにしている」という場所と時間の秩序がなくなれば、職務質問によって不審者にあたることができなくなってしまう。服装、髪型も含めて、「自由化」が極端にすすめば、不審者の発見は不能となる。また、夜なっても外出者が多いことは、避難についても混乱を生む。夜ににぎわう街も必要であるが、その場所が、ある所に集中しておれば、対応策は比較的容易となる。あちらでもこちらでも、24時間コンビニが開店しており、ふらふらと外出している者がいないほうが安全な街である。

【課題5】 警察と消防は24時間体制であるが、他の県職員や関係機関の24時間体制について考えるべきである。

この労力緩和のために、昼夜のケジメは重要である。

【課題6】 情報伝達について、国民保護計画は、消防を核に置いているが、不審な事態についての第一報は、110番ではいる可能性も高いと予想する。その連絡は、警察署長に上げられるが、そこから、危機管理監に直接つなげることが望ましい。

県警本部長は、地元出身とは限らず、短期間で代わることも多い。地理勘がある者から事態の説明を直接聞いたほうよい。県警本部長は、むしろ、警察庁と県との間のパイプであろう。保険所、消防等についても、それぞれの組織の長に行く前に、危機管理監に情報伝達するように組織しておくほうがよいと思う。いわゆる縦割り組織の弊害によって、情報の共有がさまたげられないように、関係諸機関に情報を流すことについても工夫が必要である。とりわけ、同一地域の関係機関のリーダーが相互に見知っていることが重要である。

今はやりの、学童に対する安心マップ作りは、「どこもかしこも、いつでも安全」を想定した上で、危険な場所を覚えましょうという能天気な話である。「どこもかしこも、いつでも危険」を出発点に、安全な場所と時間をどう確保するかという視点が、世界標準であろう。欧米のほうが治安は日本の何十倍も悪いが、深夜過ぎから明け方の間に殺人事件はほとんどない。また、住宅街に日が暮れてからのひったくりは一件もない。これは、そんな危険な時間に外をほっつき歩かないからである。住民の自覚的行動の大切さこそ、安全確保の原点である。さもなければ、関係諸機関職員の負担は途方もないものとなるであろう。

2 各種業界の協力

地域の繋がりよりも、企業や業界団体を通した連帯のほうが実行力は強い。たとえば、夜間に重大事態となった場合に、真っ暗な公園に集合するよりも、明るいコンビニを拠点として使うことを考えてよい。コンビニは、地理的に分散し、かつ、ほとんど全域を網羅しており、しかも、水と食料もトイレもある。事態が長引いたときも、自前のトラックもある。関係機関のなかに数えられていないようであるが、利用価値は高いと考える。

地震のさいに、自動販売機の飲料を提供することを決めている企業があるが、ある段階以上の危機状態において、同様に協力を求めていくことが考えられる。

これらの他の業界にも、物資の備蓄など様々な協力を考える。

3 自己防衛のすすめ

 避難のさいに、悪い事態を想定すれば、乗り物は使えない。また、勤め先と自宅が歩いて10分といかないことを想定すれば、勤め先のロッカーに古びた運動靴の一足でも置いておくことは大きい助けとなる。災害時と重なるが、各人が、過程においても、食料、水、家族間の連絡方法など備えておくよう指導すべきである。

以上

「新潟県の国民保護計画と北東アジアの国際情勢」国土安全研究会 国民保護法検討小委員会 平成18年 6670頁 河合幹雄・

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